外来種とは


 自然界にいる生き物は、植物も動物もすべて、在来種(ざいらいしゅ)と外来種(がいらいしゅ)の2つに分けることができます。

 在来種とは、本来の生息場所でもともと生活している生き物のことです。

   一方、本来の生息場所以外へ人間によって移動された生き物のことを外来種と呼びます。同じような意味で、「移入種」、「帰化種」といった言葉がありますが、今では「外来種」という言葉が一般的になっています。

   現在、この外来種が大きな環境問題になっています。外来種はどのような問題を引き起こしているのでしょうか。  

1.在来種を捕食する。
 外来種が肉食動物の場合、在来種が捕食されるという直接の被害を及ぼします。  

 マングースは1910年にネズミやハブを駆除する目的でインドから連れて来られました。とても繁殖力の強い動物で、餌が豊富にある沖縄では爆発的にその数を増やしました。現在では、沖縄島全域に分布を広げています。


 しかし、昼間に活動するマングースが夜行性のハブを食べることはほとんどなく、ハブ退治の役割を果たすことはありませんでした。マングースは地面を這って生活するトカゲの仲間、ネズミの仲間、昆虫類を食べて、その数を増やしてきたのです。とくに在来種であるオキナワトカゲなどは格好の餌食となっていたようで、マングースが多い地域ではオキナワトカゲがほとんどいないという現象が各地で見られているようです。また、やんばるでのヤンバルクイナの減少がマングースの捕食が原因であると考えられています。

2.在来種に毒害を及ぼす。  
 外来種が有毒動物の場合、在来種はその外来種が有毒とわからずに捕食してしまうことがあります。

 中南米原産のオオヒキガエルは石垣島や大東諸島に移入され、莫大な数の卵を産むことと成長が早いために、移入された島の全域に分布を広げました。このカエルは、目の後ろにある耳腺(じせん)から強力な毒を出すため、本種を食べた島在来の動物(ヘビ類など)がその毒による害を被ると考えられます。

3.他所から病気や病原体を持ち込み、在来種に感染させる。
 もともといなかった病原体や寄生虫を持ち込み、在来種に感染させてしまうことがあります。  

 対馬に生息するツシマヤマネコは、人が放置した飼い猫(ノネコ)によってネコエイズウイルス(FIV感染症)を感染させられました。

4.餌や生息場所を巡って在来種と競合し、圧迫する。 
 大陸や大きな島のような、生態系を構成する種の多い環境で進化した動物は、競争力が強いものが多いため、そのような外来種が島に持ち込まれた場合、競争力の低い在来種が場所や餌を巡る競争に負け、個体数が激減あるいは絶滅することがあります。  

 沖縄島に広く分布していた在来種のメダカは、外来種である北米原産のカダヤシおよび南米原産のグッピーの侵入により、食物や生息場所を巡る競争に敗れ、近年その分布域が急激に減少しました。

5.環境そのものを破壊してしまう。  
 天敵のいない動物が持ち込まれると、個体数を増やし植物を食い荒らした結果、植生が破壊されるだけでなく、土壌がゆるみ大雨の時に土壌が流れ出すなど、環境が激変する場合があります。

 1984年、石川県沖のにある七ツ島大島に放された4頭のカイウサギは、捕食者がいないため急激に個体数を増やし、1990年には270頭が生息していると推測されました。島の植生であるツワブキなどの草本は、このカイウサギによってほとんど食べ尽くされ、それによって雨風が直接地面を打ち付け、土壌の浸食や流出が引き起こり、島全体が裸地化しました。七ツ島大島の環境は、外来種のカイウサギのために大きく破壊される結果となりました。

6.交雑の結果、在来種(在来の集団)の遺伝子組成を乱してしまう。  
 在来種との間で交配した結果、雑種が生じ純粋な在来種の遺伝子が大きく乱される場合があります。場合によっては、在来種の血筋を絶やしてしまうことになります。  

 リュウキュウヤマガメは沖縄島・渡嘉敷島・久米島のみに分布する沖縄県固有の在来動物です。この沖縄島の生息域に外来種のセマルハコガメが定着し、最近リュウキュウヤマガメと交雑したと思われる雑種の個体が発見されました。これは、純粋な在来種の遺伝子が大きく乱されることであり、最悪の場合には、在来種の消失という結果になる危険性があります。

7.農作物などに被害を及ぼす。  
 農作物被害など、産業への悪影響が出る場合があります。  

 アフリカマイマイ(東アフリカ原産)は沖縄に持ち込まれ、繁殖力が非常に強いために急激に分布域を広げていきました。農作物に深刻なダメージを与えるため、特殊病害虫指定されています。 タイワンカブトムシ(原産地がインド周辺)は、沖縄島へ移入されたヤシ類について侵入したと考えられており、ヤシの木を枯らしたり、サトウキビの茎に入るなどの被害を及ぼしています。

8.人に危害を与える。
 有毒動物など、人に対して直接危害を及ぼすものだけでなく、人畜共通の病気などを持ち込み、人に感染させることがあります。  

 タイワンハブは、原産地が台湾・中国大陸東南部・インド北部ですが、1993年に沖縄島北部で見つかっており、その後も繁殖していると考えられています。本種は、沖縄在来のハブに比べて動きが素早く、毒の強さもハブの1.2倍とされています。また、タイコブラも原産地は中国南部~インドシナですが、沖縄島北部で見つかっています。タイコブラは強力な神経毒を持ち、行動も敏捷です。これら外来種の毒蛇による人への被害が懸念されています。

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    また、国内では外来生物法(正式名称は特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)という法律が制定され、外来種の引き起こす様々な問題を対処するために外来種の取り扱いなどが規制されることになりました。
 浦添市内で身近に見られる外来種は、こんな生き物たちです。  


アメリカハマグルマ


シロツメクサ


ジャワマングース


シロガシラ


クロボシセセリ


アフリカマイマイ


ナイルティラピア


グッピー(オス)


グッピー(メス)

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もうひとつ、みなさんに知って欲しいことがあります。

それは、みなさんが飼っているネコやイヌなどのペットも、自然界にとっては外来種だということです。外来種として様々な問題を引き起こしている動物たちは、ペットとして飼われ、その後捨てられた動物である場合が少なくありません。

特に、獲物を捕る能力の高いネコは、捕食者としてジャワマングースよりも深刻な影響を与えていることが最近知られてきています。

アメリカザリガニやミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)、コイ、金魚、最近では外国産のカブトムシやクワガタも、野外に捨てられた結果、その場所で様々な問題を引き起こしているといわれています。

ペットなどの動物を捨てる人は、森や川などの自然の多い場所に放してやれば、生きていけるだろうと考えて捨てるのかもしれません。しかし、その捨てられた動物のために、森や川にもともと棲んでいた生き物たちが生きていけなくなるかもしれない、ということを考えましょう。そして、ペットなどの動物を森や川に放すという行為は、絶対にやめましょう。


河川に放されたコイ


ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)


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